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膜とは何か? 思想篇

9月になったとはいえ、まだまだ湿度の高い暑い日が続きますね。

最近、廃棄物許可更新のための講習会(試験)がありました。
講習会で代表的廃棄物の中間処理方法が紹介されるのですが、廃油処理に分離膜はでてきません。埋立地の浸出液処理の方で簡単に紹介されます(膜の種類と透過防止対象)。
埋立地での分離膜モジュールは分かりませんが、弊社では切削加工部品の洗浄排水等のエマルション性含油廃水を対象にしているので、浸出液のような薄い液はもちろん濃い液体も分離しております。濃いと膜のファウリングが起きやすく、処理工程が円滑に進まないのですが、色々な工夫をして膜の能力が長期的に発揮できるようにしております。

 

後付けではありますが、今回は、「膜とは何か?」をテーマに書きたいと思います。

 

私は(分離)膜の事を考えない日はないのですが、そもそも膜とは何でしょうか?

 

我々生物には細胞膜があります。私が大学1年生のころに図書館で論文誌を初めて手に取って目を奪われた(記憶に残っている)のが、生体膜とイオンチャンネルに関するものでした。論文内容は忘れたのですが、生物の細胞というのは膜で覆われていて、この膜には選択的にミネラル等のイオンを通すゲートがあります。このゲートのメカニズムの研究だったと思います。
現象として在るものの微小世界の機構で制御されている、世界の成り立ちに興味を持ち、そうした研究をしたいと思うようになった出会いでした。

 

そう、この眼前に広がる世界もスケールを小さくしていけば、素粒子で成り立っています。
これがどう成り立っているか説明できる、世界の構成最小単位の仕組みが説明できれば世界全体が説明できる、統一理論の夢があるわけです。

 

議論の余地は大いにあれど、超弦理論がその筆頭にあります。粒子が点ではなく線であることで有限性が生まれるので理論破綻を免れ(半径0でなくなるので無限大量でなくなり)、M理論をもってくることで重力子を超弦理論に取り込めるようになりました。

 

この統一理論ないし超重力理論のM理論に登場するDブレインは「膜」なんです。水面のように広がった、場の理論のソリトンなんです。
ひも状の開弦は両端を固定端として膜に貼りつき、わっか状の閉弦は膜から浮いた状態(もしくは膜同士をつなぐ円筒)として説明されます。

 

語弊はあれ、この世の現象は膜状のものによって築き上げられている、と考えれば、胸は高鳴ります。

 

取り込めたからといって諸々の整合性や実証性が不完全であるようですが、、、(最近は8月10日に2018年から開始していたミュー粒子の実験統計値が統一理論の手前の標準理論から導かれる予測値に合わなかったようです。最終的な結論が出るのは2025年のようですが、理論がおかしいのか、実験がおかしいのか、難しい問題です。

 

 

話は胸の高鳴った細胞膜に戻ります。

 

そもそも生物の定義とは何でしょうか?

ある程度生物学者たちに受け入れられていると言われるのが次の3条件です。
(1)外界と膜で仕切られている、(2)代謝を行う、(3)自己複製する

 

そう生物の定義にも膜が出てきます。
M理論の膜は数学的要請に応えるもので、boundaryな性質をもっていると考えれば、膜というものに向き合うことが我々の存在にも向き合うことになると、、、

 

数学は数学語で語るべきで、哲学は哲学語で語るべきで、日常語を持ち込むと数学の世界のことを説明しきらない不誠実さが生まれるので、、、知らずとソーカル事件が生まれるわけです。かといって、M理論なんて私が素粒子物理学を専攻したとして何年かけて数学的記述が自身でできるようになるのかというレベルでしょうが。。。
研究にはお金がいるので、予算をとるためには、日常語で語るべきで、何にせよ難しいですね。

 

 

 

我々はどこから来たのか

我々は何者か

我々はどこへ行くのか

 

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

(有)アイ・エス・オー 長友

 

 

廃プラは技術者が真っ当に向き合った記録

良い言葉が見つかりません。

 

お客様とお話させていただく際、単なるお金の話だけでなく、製品の話を聞かせていただくことがあります。
私に話しても仕方ないと思われているかもしれませんが、、、私はこちらの方が楽しい時間です。

 

お話から製品へのこだわりや思いを感じます。私の引き出しが少ないのが申し訳ありませんが、、、それでもお話していただけます。感謝です。

 

 

「簡単に見えるかもしれないけど、これは技術の塊やからね」

 

そう言われて、分かっていたつもりでしたが、ものづくりのプロとしての矜持があるからこそ廃棄される製品があるのだと実感しました。

 

技術を磨くために作ったものも廃プラにはあります。

良いものを作るために出てくる副産物であると。廃プラの方がいろんな挑戦の跡があるんじゃないかとも。

 

 

それは、ごみじゃない。

 

まだまだ私たちにも向き合うべきごとがある、そう思わされます。

夏季休業のお知らせ2023

いつもお世話になっております。
夏季休業のお知らせになります。

8月12日土曜日~8月20日日曜日

となります。

定期業務のお客様に対しては、ご迷惑をおかけしないよう、一部出勤することはありますが、基本的にはお休みさせていただきます。

ご相談等ございましたら、緊急時はお電話(携帯転送あり)、休業日明けはお問合せからメールでご連絡いただけますと幸いです。

暑い日が続きますが、みなさまご自愛ください。

先日、お客様宅で七夕が飾られておりました。片付け忘れではありません。お客様もよくご理解されておりました。太陰太陽暦、いわゆる旧暦に則った伝統的七夕に合わせたものです。
今年は8月22日になります。
国立天文台の観望会でも伝統的七夕の方が意識されておりました。梅雨は星空が見えないことが多いのもありますが、、、(たぶん)
アルタイルとベガの七夕説明、そのままデネブ(夏の大三角形)からの、、、アルビレオ銀河鉄道の夜(宮沢賢治)にいけます。
基本的に毎年8月の50センチ公開望遠鏡はアルビレオです。

七夕の願い事には、世界平和や健康といった当たり前の日常への想いに溢れていました。

就労継続支援A型事業所の地域連携先企業として

就労継続支援A型事業所の方を弊社の作業場に招いて、樹脂原料リサイクルのために分別作業を行ってもらうようになって、今年で5年目になります。

基本的には1人スタッフさんに6人利用者さんに来てもらっています。

弊社で自信をつけてもらって、一般企業就職された方がいるのは、今後も続けていくモチベーションになっております。

前述のとおり、基本的には、数種類の混ざったプラスチック材を分別していただいております。その他に草抜き等もあります。
プラスチック部品を製造している工場での端材を中心としたものであり、使用済み品ではなく、出荷前のものになります。分別目的が新たなプラスチック製品に生まれ変わらせることです。従って、一般的なゴミの分別とはニュアンスが違います。

すべてを分別することが理想ではありますが、貴重な労働力(人的資源)ですから、作業状況を見ながら分別の優先順位をつけることもあります。

基本的にはマイペースで各々が作業する内容(スタートからゴールまで一貫した作業)だと相性が良い方が多いです。ゴールまでの進捗状況に合わせて状況判断が必要になる場合、それに対応できる方は比較的一般企業に移られるのが、この4年見て取れることです。

分別対象物の準備、一部作業補助、作業後の検品作業までを考えると、リサイクル率(減容化率)や分別樹脂原料の価値が委託料を上回るか怪しいところもあります。
案外、検品作業が大変です。私自身で分別するときは別形状だけれど同種の材質のものを意識して、効率よく樹脂の種類を特定していきますが、全く知識のない方が分別すると、同種の材質のものをそれぞれ全然違う場所に散在していくので、非常に特定の難易度が高くなります。だから、分別中に首を突っ込む必要があるのですが、、、
出勤日についても、弊社は長期休暇の取れるときは1週間休暇をとりますが、就労支援者側には出勤日数が決まっており、長期休暇中の就労支援者出勤日は私が事務所を開けて仕事を計画・用意・補助・片付けしていくことになるので、、、

とにかく、存在意義を感じられているうちは、続けられる限りは続けたいと思っております。

 

Venus Flytrap

お世話になっております。
3年前に買った1株のハエトリグサが5株になりました。現在、可愛らしい白い花を咲かせています。

会社で育てていたのですが、ちょっと弱っていたので、自宅に持ち帰っておりました。
なかなか蕾が花開かず、新しい葉も少なかったので、開花前に花を摘んでしまおうかとも思いましたが、無事に花も咲かせました。

 

待ち望んでいた開花ではありましたが、台風に起因する強風が心配で花を摘みました。
浅い根張りであることから、水で土壌が緩み、強い風が吹くと、自身の花の重さに耐えきれず横倒しになってしまいます。
また、花に栄養を取られすぎて、株自体は弱ってしまいます。

 

 

今朝摘んだ花を子どもに渡したら、ずっと離さず、保育園の中に持っていきました。
ハエトリグサの葉を蝶々と言って鷲掴みする子どもでもあります。
それでも、無事花を咲かせ、一番喜んでくれる子どもに渡せて良い形で会社に戻せそうです。

会社は会社で、ハエトリソウの葉の開閉を楽しみたい欲求に駆られて、葉が枯れるリスクを度外視して触られる方もいますのも難しいもので、、、


今年も虫の殺生を行っております。

虫に痛覚はあるのか、、、熱や圧力に反応する神経細胞の受容器はあるようで、この受容器が中枢神経の脳でどう処理されるか?
非常に心苦しい問題です。
木の剪定をしていると、身体のどこかに蟻や毛虫がつくことはあるし、蜂に襲われることがあります。私自身は幸運なことなのか嚙まれたり刺されたりしても比較的軽傷ですむことが多いです。
それでも取引先の方に何かあったら矛先は弊社に来ますし、蜂はアナフィラキシーが怖いし、木や花だって弱ります。
基本的に物理的に対処します。会話は成立しません。薬は毒や窒息を思わせるので、あまり使いたくありません。
だから、某ラケットの子ども用で物理的にとなります。
少なくとも短視点的であれば、ピンセットで離れたところに(目の届かないところに)投げ捨てることも考えられます。
鋏で羽根だけ落としたら、、、何が可哀想で何が妥協点になるか、わからなくなります。


何が環境事業なのか、誰のための何のための環境なのか、何かをすれば益も害も生み出すものです。
いろんな物差しがあれば、いろんな(広い意味での)学説もあり、なんだかんだで自分にとって都合の良い立場を良いように捉えてしまう弱さ・思考停止の部分もあり、、、

これが何かのブレイクスルーとなりうるのか、ただただ沈んでいくだけなのか、、、

 

何を見て、何を見ないか、どこまで見るのか、、、、結局、自分自身と向き合うことになります。

私はどう生きたいのか、、、いつだって水鏡に映る私は揺れています。

 

雨で始まるGW

小雨をふらす老樹のうつろのなかに
たましひをぬらすともしびうまれ、
野のくらがりにゐざかりゆく昆虫の羽音をつちかふ。

                  (大手拓次)

 

ゴールデンウィーク中にやりたいことのひとつに、膜分離の思想として、膜や境界に皮膚、数学におけるgeneral topologyのboundaryについてまとめたいと思っていたところ、松岡正剛氏の千夜千冊に久しぶりに誘われ、この小雨が丁度大手拓次氏の言葉が同サイト内にあったなと引用いたしました。

ここから、「大手拓次氏はライオン歯磨本舗様の広報部におられたな、私も広報といえば天文台の広報にいて、最近話題になったi-space様、、、」との話か、「うつろといえば、虚舟で、松岡正剛氏が以前中空構造と虚ろの話で澁澤龍彦氏の話を、、、」との話か、「ゐざかりは遠ざかり(遠ざかる)というように、い避かる、、、」との話か、、、ゆっくり思考をぐるぐるさせていたいところでした。

ビジネスでは「巧遅は拙速に如かず」が重要になることが多く感じられます。

時には、ポツポツと言葉を紡ぎたいと思うこの頃です。
ブログがビジネスとしての広報になっているのか、どうかは別として。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(有)アイ・エス・オー 長友

GW休暇

GW休暇のお知らせです。

4月29日土曜日から5月8日月曜日までお休みをいただきます。
A型就労支援事業所との業務提携上、私が出てくることもありますが。。。

電話対応等はできますが、履歴が1日で飛んでしまうほど多種多様な電話が来ることもあります。
休暇後の対応でも大丈夫な場合、お問合せよりご連絡いただけますと幸いです。

迷走するロケット、舞う<天使>、地を這うドードー(ピンチョン)

カメラは音も立てずに物かげからこっそり(中略)古く変色した銀の冠をかぶっている。

(略)

まるでその一齣が停止して、あの永遠なる黄金の一瞬へと引き延ばされたかのようだ。ま新しく、しかも変色した黄金の一瞬へと。

(略)

古めかしく雨風に傷んだ窓ガラスに、フィルムに収める静止した一瞬、彼女のドレスが、顔が、髪が、手が、ほっそりしたふくらはぎが、すべてガラスと一体になって輝く――それはあちこちに落ちるロケットの爆風に一日中震える半透明な雨の守護神。

(略)

この北方の古い形式――つまり、迷える子どもたち、お菓子の家に住む森の魔女、囚らわれの身、肥え太ること、<オーブン>など――こそ保持すべき自分たちの日常生活、つまり避難所なのだ。かれら三人には耐えられないだろう、外部の――<戦争>、「偶然」の絶対的支配、そのまっただなかに置かれた自分たちの身の上のおぼつかなさなどには……。

(略)

しばしばロケットは狂って、でたらめに方向を変え、キーンというものすごい音を立てて迷走し、回れ右して墜落する。手もつけられず、しかも恐ろしいことに修正もできずに狂ったままで。

(略)

心中ひそかにこれだけは、信じているかもしれない。あらゆる<おとぎ話と神話>のなかでこの形式だけは。つまり、森のなかのこの魔法の館がのちのちまで残り、たとえ偶然にしろここに爆弾が落ちることはないと信じているのだ。

(略)

何のためだったのだろうか。殺戮の海、壊疸の冬と飢えの春、不信心な人物の徹底的追跡、〈獣〉と格闘する真夜中、氷になった汗と青白い雪となった涙、こういった瞬間を求めるのでないとすれば。

(略)

われわれ人間のただの餌食だ。神はそれほど残酷であるはずがない。

(略)

しかし信念に関していえば……かれは手にしている銃という鋼鉄の現実しか信じられない。

(略)

雪がくるくる舞い、目に見えない針が緑色のブラインドのむこうの神経のない窓ガラスにこつこつあたる。フィルムがリールに入れられ、電灯が消され、蛸のグリゴリーはスクリーンに注意をむける。スクリーンにはすでに人影が歩いている。カメラは、(中略)古く変色した銀の冠をかぶっている・・・・・・。

樹脂(プラスチック)の分子式と特徴

案外?樹脂排出企業の担当者やリサイクル事業者に樹脂の分子式を描ける方って少ないです。マストな知識ではないですからね。

大学を理系受験していれば、化学やってて、高分子もやっていると思います。
私なんかは高校化学で高分子にきたとき、スポーツと人体に興味があったので、ワクワクして学びました。プラスチックは白川英樹先生のパネルディスカッションに高校時代行ってますし、受験でもPA6やスクロースは見かけたような気がします。

 

樹脂の識別で有名なのは、バイルシュタイン反応ですかね?
塩ビ(塩化ビニルPVC)はハロゲンの塩素を含んでいるので、銅と熱反応させて塩化銅にし、火であぶると青緑の炎色反応が確認できます。

 

【比重】
比重ですと、例えば水中沈降によって確かめる場合、空気を抜かないといけないし、形状による抵抗力や浮力を意識しないといけません。
それに、添加剤は比重が大きいものが多いのも忘れてはいけません。
触った感覚や艶などで添加剤を意識しつつ、形状によるモーメントを意識しつつ、樹脂自体の比重を想定する(選択肢を絞る)ことが多いです。

 

【固さ・しなり】
樹脂の分子ベースは炭素や水素が手をつなぎあっています。1つの手でつないだり、2つの手でつないだり、輪っか(六角形)になったりしています。
PP(PE)とPSの違いは、輪っかになっているかどうかなんですが、固さという点では全然違います。

 

それが、材質にそのままでてきます。

 

固いプラスチックはだいたい輪っかになって手を繋いでいます。ベンゼン環が分子式に含まれています。
テレフタル酸からできるPBTやPET,ビスフェノールAからできるPCはみんな固いです。
逆に柔らかいビニール袋はベンゼン環のないPPやPEです(シートや折れ目が付くような袋は多層フィルム構造で、薄く多種樹脂の層が入っていることもあります)。
ベンゼン環がなくて、固くなりたいときは、ガラス繊維を身体に取り込んでいる子が多いですね(ベンゼン環があっても強化材にガラス繊維を入れることも珍しくはありませんが)。

 

ベンゼン環みたいに輪っかになっていると、耐熱性もでてきますね。やはり輪っかになることでの安定性というのはあります(ただベンゼンが独立して出てくると、人体に、、、)。

火であぶると出てくる煤は不完全燃焼反応によるとみられ、二重結合(2つの手でつなぐ、ベンゼン環内にも含まれる)が推測されます。
二重結合は工業用エンジニアリングプラスチックになると大抵使われていますが。

吸水性の高いものは親水性のあるアミド結合やエステル結合を含むことを推測させられます。

 

 

 

プラスチック触りながら、一種の触診ですね、、、どんな分子構造しているか考えます。

といったことで、高校化学それなりにやっていて良かったと思うことはあります。
高校卒業後はなかなか触れる機会はありませんでしたが、、、化学的なことはイオンチャンネルがシンプルに感心して面白い仕組みだなと思いましたが、、、人工臓器のための材料工学は関わる可能性があるかもと思いましたが、、、が、、、が、、、人生どうなるか分からないものです。

(有)アイ・エス・オー 長友

分離膜装置導入1年

とうとう4月です。積みあがる書類、分析対象のせいか、多くの企業様が新年度を迎える実感がわきません。
強いて言えば、決算棚卸前の緊急処分依頼に、走り回っていたのが小休止になるかなといったところです。

 

新しい、と言えば、弊社が導入した分離膜装置が1年たちました。
能力や課題について学習データがそれなりに揃いました。
機械とも一部の排水については、一方的ですが、理解と愛が深まったと思っています。
少しずつご紹介させていただき、少しずつ分離膜を使った処理に興味をもっていただいてもらって、弊社に排水処理のご相談をもちかけていただければと思っております。

弊社に分離膜装置導入を手掛けていただいた企業様は排水処理といえばすぐに名前が挙がる企業様ですが、それでも分離膜装置を排水処理で導入したのが初めてでした。
純水製造装置に使うような分離膜を排水処理装置に持ってくるのですから、、、

 

【処理目的】
導入のメインとなる処理ターゲットはエマルション性含油廃水です。もっとかみ砕いて言えば、油分を含んでおり、そのままでは放出できないけど、ほとんど水だから引火性もないような液体です。

これを濃縮していこうという第1のモチベーションです。
更に、きれいな水を取り出そうという第2のモチベーションです。

この2つのモチベーションに合わせて、1次処理、2次処理と二段階濃縮をとります。

 

【1次処理:UF膜】
1次処理は限外濾過(UF)膜によって、大きな分子と小さな分子を選択的に分離します。圧力を加えて、イオン等の小さい分子を膜から外に出します(大きい分子を膜内に残します)。
医療では血液透析に同じような手法が用いられております。

あくまでも膜です。フィルターのように目は見えません。穴ではなく孔と言い、孔径は1~10nmくらいです。1mの1億~10億分の1です。1mmの10万~100万分の1です。

大きいと言っても、光学顕微鏡でも見えないタンパク質やウイルスサイズすら通りません。

UF膜を透過した液(UF処理水)を目視すると、何も言われなければ水道水に見えます(高濃縮負荷がかかってくると、うっすら白みがかかったり、黄色味を帯びたりします)。

一般に油と認識できるものは確実に透過できないので、油を濃縮することができます。
※厳密には高カロリー燃料のために高濃縮するとマヨネーズ状になり、膜が詰まってしまいますので、低カロリー燃料になります。

 

【2次処理:RO膜】
2次処理では逆浸透(RO)膜によって、真水のみを膜から外に出します(イオン等のミネラル分といった小さな分子すらも膜内に残します)。
医療だと腹膜透析が浸透圧を利用しておりますが、腹膜透析は正浸透圧現象です。
弊社の処理装置では、逆浸透圧現象を起こさせます。
浸透圧によって溶媒(水)の移動が薄い方から濃い方に膜間を移動することから、逆ベクトルに圧力をかけてあげることで、いわば錯覚させて溶媒の移動が濃い方から薄い方に移動させます(逆浸透)。この薄い方が真水であれば、処理対象の排水から真水のみが移動していくというわけです。

一般にRO膜は純水製造機であったり、海水から飲料水を(脱塩)作ったりするのに使われます。

モジュールと運用方法で廃油のUF処理水でも目詰まりをコントロール運用できるように頑張っています。

 

彼女が無礙であればあるほど、私の刃はますます深く彼女の死へわけ入った。そのとき刃は新らしい意味をもった。内部へ入らずに、内部へ出たのだ。

(三島由紀夫)

 

そうですね、透析みたいなことを汚れた排水でできるのか?と思われることと思います。
しかも、自分が仕入れて、使って、排水したものではなく、目の届かない様々な他者によって手を加えられて排出されたものであるから、安全に、そして、安定的に処理ができるのか?とも。

科学の力を信じろ! とは言いません。
難しい理論を振り回す、、、のはさておいて、原理上、そして、センサーによって、少なくとも安全性は担保できております。

原理上というのは、単純明快(乱暴)に言えば、水ほど小さな分子はないのだから、水しか通れないような穴(孔)を何が通れるのかとも言えます。つまり、物理的に自分の身体より小さな穴は通れないのと同じです。

 

【処理安全性】
安全性管理のために、万が一、膜が破れたり、穴が広がった(押し通った)としても、電気伝導率で監視して防ぐようにしています。
電気伝導率というのは逆に言えば電気抵抗をみています。不純物(イオン)は電気を通すので、その通りやすさ(電気抵抗の度合い)を監視して、不純物が外に出ていかないように制御しています。基準値を満たさないと出ていきません。
あとは、pH、COD、ノルマルヘキサン値は排水基準値があります。精密に測ること、適度な指標でも頻繁に測ること、事前にセンサーでブロックすることのバランスは大事だと思っています、、、と話がそれていってますね。

そう言えば、廃油とお友達になりたくて、使用油や洗浄剤のSDSみたいな紹介文をいただくこともあるんですが、成分(分子式)が一部非公開であることもあって、名前と顔が一致しないみたいな、もどかしい時があります。
分子が直鎖かどうかでも膜の透過具合が変わってくるので、膜分離を考える上で、処理対象物の成分と分子式は濃縮・分離のイメージ(処理予測)をするのに、頭を巡らせることになります。

分子式ってすごい情報を持っていることを、次は樹脂(プラスチック)識別について書きたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(有)アイ・エス・オー 長友